第18章 少女が見たもの
「うるせぇなクソメガネ。そもそも朝っぱらから何でお前がエルヴィンの所にいやがるんだ。捕まえた巨人にたっぷり愛情を注いでる最中じゃなかったのか?」
「あ、そうそう!リヴァイにも聞きたくてさー、あ!エマにも!」
「何の話だ?」
リヴァイが冗談混じりに言った言葉に、ハンジは瞬く間に顔を輝かせながら話し始めた。嫌な予感がする。
「捕まえた巨人の名前だよ名前!候補が多すぎて一人じゃ決めらんないから君たちにも意見を貰おうと思って!」
「…………」
話を聞いた瞬間、あからさまに嫌悪感を漂わせてハンジから目を逸らすリヴァイ。
一方のエマはというとハンジの話に目を丸くしている。
やっぱり、いくら巨人に興味を持っているエマでも、あの気持ちの悪ぃ面に名前を付けたがるなんてどうかしてるって思うはずだ。
エマの横顔を見ながらそんなことを思っていたリヴァイだが、彼女から発せられた言葉に耳を疑ってしまうのであった。
「巨人に名前を…………素敵です!」
「はぁ?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまうリヴァイ。
まさかこいつもこの巨人狂と同じ思考回路だったなんて……
「でしょでしょ?!あれだけ巨人に興味を示してくれてたエマならそう言ってくれると思ってたよ!
巨人のことを研究する為にはまず対象に対してより愛着を持たなくちゃいけないからね。そういう意味でも命名は大事なことなんだ。」
「その考え方素敵です、さすがハンジさん!それで、一体どんな候補があるんですか?」
「…これだ。」
エルヴィンが出てきて紙切れをエマに渡すと、そこには勢いのある文字でびっしりと名前の候補が書かれていた。
「うわぁーこんなに!確かにこれは迷っちゃいますね!」
「だろだろ?私はこれとこれとこれとこれがいいかなと思うんだけど、他のも捨て難くてさー。」
二人はまるで好きな人を見つけてキャッキャする少女のように肩を寄せて喋っているが、話の中身はまったくもって色気も皆無な巨人の名前についてだ。
盛り上がる二人を後目にリヴァイは大きなため息をつくと、ソファにドカッと座り込んだ。
エルヴィンもまた、やれやれといった様子で二人を見つつ、腰を下ろしたリヴァイへと視線を移動させた。