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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第17章 心を通わせた先 ※




食べる物も娯楽も情報もありふれていて、家族や友人、今の自分を作り上げてくれた大切な人達がいる世界。

対してここは、狭い壁の中で決して便利ではない生活を強いられ、さらに壁の外は人間を喰らう巨人達が蔓延る世界。


普通は故郷に帰りたいと思うだろう。

だがエマはそうは思わなかった。


ここで暮らし始めて、生活の不自由さや不便さを比べて嘆くような気持ちはあっという間に消え去った。

個性的だが人間味溢れ、優しく、そして揺るぎない意志を持って戦う人達との出会いが、エマの気持ちを大きく変えていたのだ。

いつしかエマは、巨人の脅威に立ち向かう彼らの力になりたい、そして巨人をこの世から一掃することを自分自身も望むようになっていたのである。



そして何より、ここに留まりたいと思う最大の理由は、愛するリヴァイの存在があるから。




彼女は知ってしまったのだ。






“愛する人と愛し合える幸せ”を……






始まったばかりのこの恋は、人生を左右する選択を迷わすのに十分なほど、エマの心の中を支配していたのである。














「リヴァイ兵長は……」


落としていた視線をリヴァイへ向けた。



「兵長の気持ちはどうなんですか…?

兵長が私の幸せを思って自分の生きたい世界を選択しろって言ってくれたように、私にとっても兵長が幸せでいることが一番なんです。

私のした選択の先に兵長の幸せがないのなら、そんな方は選びたくないんです。」



先程までの弱々しい声とは打って変わって、はっきりとした声で話すエマ。


そんなエマを見据えたままで、少しの沈黙の後、リヴァイは静かに口を開いた。









「最初は…お前を好きだと認めたくなかった。

……認めちまえば、いずれ来る別れに自分が耐えられるのか想像出来なかったからだ。
今思えば、その時点でかなりお前に惚れちまってたってことだがな。

たが、今も正直想像出来ねぇ。

やっとの思いでお前を手に入れることが出来たのに、想像したくないと言った方が正しいのかもしれねぇな…」



リヴァイの言葉を一字一句逃さず、胸に刻み込む。





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