第17章 心を通わせた先 ※
「こうして兵長と結ばれたのに…嫌です。帰りたくない……」
弱々しく言葉を紡ぐエマ。
リヴァイはそんな彼女の手をそっと包み込むと、強い眼差しを向けて口を開いた。
「お前が帰りたくないならここにずっといればいい。帰る方法がはっきりしただけで、今すぐ決断しなきゃいけないわけじゃねぇだろ?」
「そう、ですけど……」
リヴァイと離れたくない。
だけど、帰る方法が分かってしまった以上、やはり元の世界のこともこのまま放ってはおけないと思ってしまう。
二つの世界が同じ速さで時を刻んでいるとすれば、もう二ヶ月も家族や友人の前から姿を消していることになるのだ。
それを考えると、このままリヴァイと一緒に居続けていいのか…
どうしよう。どうすればいいか分からない…
迷い込んだこの世界にのめり込み、日々忙しなく過ごしているうちに何となくずっと先送りしていた、エマ自身の根本的な問題。
それが今急に現実味を帯び出して、エマの頭は軽くパニックになっていた。
視線を落として一点を見つめたまま黙りこくってしまったエマに、リヴァイは握った手に力を込めながら話を続けた。
「エマ、よく聞け。
ここに居たいだけ居るのもいいし、帰りたいなら止めはしねぇ…お前の人生を左右する選択に口出しできるような権利までねぇからな。
だが俺はお前のことを誰よりも大切に思う。だからこそ、お前には絶対に幸せになって欲しい。そしてそれが俺にとっての幸せでもある。
だからその頭でよく考えて、どうすれば一番幸せになれるのか、自分がこれから生きていきたい世界を選択をすればいい。」
「自分が生きていきたい、世界……」
きっとリヴァイなりにエマのことを想って話してくれたのだろう。それは彼女にも痛いほど伝わっていた。
これからの人生を、元の世界へ戻って生きていくのか、それともこのままここで生きていくのか……
ここへ初めて来た時に、自分の人生を掛けた選択をすることになるなんて誰が予想していたのだろうか。