第17章 心を通わせた先 ※
「だが、さっきも言ったがお前が帰ると言うなら止めない。俺の我儘でお前の判断を迷わせたくな」
話の途中で突然身体を押され、バランスを崩してよろけてしまう。
視線の先にその姿はなくて、背中に回された腕の感覚とふわりと香った匂いで初めて、エマが自分に抱きついて来たことが分かった。
「やっぱり無理です。私だって、兵長がいなくなった後の事なんて想像したくない…」
服をギュッと掴んで顔を埋めたまま泣きそうな声を漏らすエマ。
リヴァイは見開いた目を細めると、エマの髪を優しく撫で、その小さな身体を包み込んだ。
……今なら、少しくらい本音を言っても許されるだろうか。
「お前の幸せが俺にとっての幸せだと言ったが、それをもう少し具体的に言ってもいいか?」
まるで子供を宥めるような優しい口調で話すリヴァイ。
エマは顔を上げ、リヴァイの目を見ながらコクリと頷いた。
「お前の幸せそうな顔を隣で見れることが俺にとっての幸せだ。
………お前を失いたくない。俺の傍にいろ。」
見る見るうちに大きな瞳に涙が溜まっていく。
服を掴む手に力が入った。
「離れたくないです、ずっと一緒にいたい……」
やっぱり、今すぐに決断なんて出来ない。
今は、目の前にいる愛しい人を抱きしめるので精一杯だ……
一緒にいたい。
もっとたくさんの時間を過ごしたい。
だから、どうか神様。
いつかはちゃんと決断するから。
わがままかもしれないけど、まだこの世界で夢を見ることを、どうか許してください。