第17章 心を通わせた先 ※
適当なアプリをいくつか起動してみた。
…問題なく動ようだ。
次に日付を確認した。
「2019年10月10日…………
あの日から一日も進んでない。」
ここへ来てからもう二ヶ月が過ぎていたが、日付がそのままになっているあたり、この電子機器もやはりどこかおかしくなっているんだろう。
当然といえば当然だが、電波も圏外になっている。
「こいつがいきなり光出した原因だが。」
あれこれ考えているエマにリヴァイが唐突に話し出した。
エマは顔を上げ、彼の言葉に注意深く耳を傾ける。
「あの井戸に飛び込もうとしたことと関係してるんじゃねぇのか?」
「井戸………あの井戸に近付いたことで何かの力が働いて、電源がついたってことですか…?」
「確証はないがな。
だがもし本当にそのせいでこいつが動くようになったんなら、やはりあの井戸はお前の世界と繋がっている可能性が高い、と考えるのが妥当だろうな。」
「…………やっぱり、あの井戸は繋がってるんだと思います…」
最初に見つけた時のあの直感に加えて、元いた世界とこの世界の井戸は姿形がピッタリと重なっている。
さらに井戸に飛び込もうとした後に突如スマートフォンの電源がついたという事実。
エマの中では確実にそうだと思った。
「お前がそういうなら、恐らくそうなんだろうな。」
リヴァイは冷静に言葉を返す。
こちらを見つめる三白眼からは、何を思って話しているかまでは上手く読み取れなかった。
「………………」
「どうした?」
突然黙り込むエマの顔をリヴァイがのぞき込む。
彼女は何かを思い詰めるような表情をしていた。
「なんだか……急に怖くなってきちゃいました…」
「…………」
「一度はこの世界とお別れする覚悟を決められていたはずなのに…改めてこうして実感してしまったら、私………」
エマは手の中のスマートフォンを握りしめながら、揺れる瞳をリヴァイに向ける。
「兵長と離れてしまうのが怖くて堪らなくなっちゃって…」