第17章 心を通わせた先 ※
ゴトンと鈍い音を立てて床に落ちた物をそっとのぞき込む。
「なんだ…こりゃ……」
リヴァイが目を丸くして見つめる先には、青白く光る黒く薄い箱のような物体。
これは確か……
エマがこの世界に来た時に持っていたものだ。
確かスマートなんとかとか言ってたが、あの時はこんな光は放っていなかったはず…
リヴァイは床に落ちた黒い箱を恐る恐る手に取り、その全体を見回した。
大きさの割に重量感があって表面がいやにツルツルしている。この独特な触り心地はどんな材質なんだ?
それにここ…光っている部分にエマの顔が映っている。
見れば見るほど不思議な物体でまったく理解が追いつかない。
リヴァイは改めて、エマのいた世界がこことはとんでもなくかけ離れた文化を持っているということを思い知った。
「お待たせしました、ってあれ?そんな所で何してるんですか?」
色々と考えながらしばらくその箱を眺めていると、後ろからエマの声がした。
エマは濡れた髪をタオルで拭きながらのぞき込むと、その手に持つ物を見て声を上げる。
「えっ?電源ついてる?!」
突然大きな声を出したエマに顔を上げると、彼女は驚いた顔で黒い箱とこちらを交互に見つめていた。
「…ビックリするじゃねぇか。」
「す、すみません…これ…兵長が見た時からこんな風に光ってたんですか?」
「そうだ。この部屋に入ってきた時に落としたままになってたから拾ったんだが…その時からこの不気味な光を放っているな。」
「あ、ごめんなさい。落としたこと忘れてしまってました…
でもこのスマートフォン、昼間までは光ってなくて真っ暗だったんです……すみません、ちょっといいですか?」
エマは難しい顔をしてスマートフォンを何やら指でいじっていた。
この世界に来てから何度か試したが、一度も電源が入ったことはなかった。
しかしそれが今になって、突然待受画面が煌々と映し出されているのは何故?
兵長が何か操作したわけではなさそうだし、何故このタイミングで……
エマは画面ロック解除の暗証番号を入力すると、その画面はなんの滞りもなく切り替わった。