第16章 旅立ちの日
太陽が眩しい白から、一日の終わりを告げる朱色に色を変え始めた頃。
拠点設営後の復路も順調で、予定より早く壁外調査から本部へと帰還した調査兵団であったが、一行は休む間もなく事後処理に追われていた。
怪我人の処置、犠牲となった兵士の搬送、諸々の後片付けと、今回捕らえた巨人を研究所まで移送する作業等がある。
リヴァイも兵士長としてやることは山積していたのだが、帰って直ぐからエマの姿を探していた。
エルヴィンに言われたことがずっと気がかりで、一刻も早くエマに会わなければという気持ちだったのだ。
「オルオ。」
「兵長!お疲れ様でした!今回は犠牲者の数が異例とも言えるほど少なかったそうで…」
軽傷の兵士達が治療を受けている広い空き部屋で、オルオの姿を見つけ駆け寄る。
「今回はあまり巨人と出くわさなかったから運が良かった。巨人の捕獲も以前に比べたら格段に楽になったしな。今回は最低限の損害で済んだと言える。」
「それは良かったっす!本当に今回はご迷惑をお掛けしました……俺、初めてここで待つ立場になって改めて思ったんです。やっぱり自分の手で巨人を斬滅させてやりたいって。」
オルオは他の兵士が壁外へと繰り出す中、ずっとやるせない思いでいたのだろう。
リヴァイには、心の底から悔しそうに話すオルオから、彼の気持ちが手に取るように分かった。
そんな部下の思いを受け止め、厳しさの中に暖かさも込めてで声を掛けた。
「なら、その思いを絶やさないよう次の壁外調査に注げ。」
「……はいっ!承知しました!」
オルオは今にも泣きそうな顔で敬礼していた。
しかし、続けざまに発せられたリヴァイの言葉にオルオは目を丸くする。
「…ところで、エマがどこへ行ったか知らねぇか?」
「え?兵長、知らないって…兵長が頼んだんじゃないんすか?」
「…なんの事だ?」
オルオの返答にリヴァイは固まった。
なんとなく嫌な予想はしていたが…これは一体どういう状況だ。
「エマなら憲兵団本部へ行ってますよ。その、リヴァイ兵長から頼まれごとをされたからって…」
「?!」
なん…だと……
リヴァイの瞳は大きく揺れた。