第2章 始動
「すみません!あの、もっとすごいこともたくさん聞いてま」
「明日あのクソメガネをしばく。」
慌ててフォローしたかったがリヴァイに言葉を遮られてしまう。
エマはハンジの明日が心配になってしまった。
「あのあのっ、ハンジさんは何も悪くないのでどうかお見逃しを…」
「あ?見逃すかどうかは俺が決める。」
「そんな…」
自分のせいでハンジさんがしばかれてしまう…とエマはリヴァイの冷酷な言葉に愕然とした顔をしてしまう。
だが次の瞬間、不機嫌そうに刻まれていた眉間の皺は伸びて、リヴァイは表情を緩めて“考えておいてやる”と言っていた。
エマはハンジに申し訳なく思いつつも、リヴァイがハンジの事を許してくれますようにと願った。
「それより…俺もお前に用があったところだ。中へ入れ。」
「え?あ、はい。」
何だろうと思いながらリヴァイの後について部屋に入る。
「そこに座っていろ。」
「はい。」
エマはリヴァイに促されるままソファへ腰を下ろすと、キョロキョロと周りを見回した。
昨日は全然余裕なくて気が付かなかったけど、無駄なものが一切なくてすごく片付いてる。
ベッドのシーツはピンと皺なく張られてるし、着るものはきちんと畳まれている。床もピカピカだ。
綺麗好きの話は本当だったのかと思った。
「これを、エルヴィンから預かった。」
隅々まで掃除が行き届いた部屋を見渡していると、紙袋をひとつ手渡された。
中には衣服が何着か入っている。
「服なら今朝ハンジさんから何着かいただきましたけど…。」
その中の一着を取り出すと、背中に大きな2枚の翼が描かれたジャケットだった。
「それは調査兵団の兵服だ。」
「…え?!どうして私に?」
兵士でもない居候みたいな立ち位置の自分に何故そこまで…不思議に思う。
「兵士は休日以外は基本的にその格好で過ごす。
兵服だらけの中、一人私服でうろうろされると面倒なことが起きかねんからな。」
…そういうことか。