第15章 喪失 ※
「ハハ、本当にわかり易いな。君の気持ちに気付いていたのがそんなに意外だったか?」
「あ、その……本当に全てお見通しなんだと…」
「好きな人のことをつい目で追って注意深く見てしまうのは君も同じだろう?
君に対してのアンテナは他の誰よりも敏感になっているからな、普段の様子を見ていれば何となく分かってしまうよ。」
エルヴィンはエマの上体を起こして、脱がせたシャツを肩に羽織らせながら涼しい顔をして答える。
エマはエルヴィンの視線を気にしながら素早くシャツに袖を通した。
「エマ。今回は私に非がある。君の気持ちに気付いておきながら、弱っているところにつけ込んでこんなことをしてすまなかった。
君を傷つけたくないと言ったのに、結局泣かせてしまったこともだ。申し訳ない。」
真剣な顔で謝るエルヴィンに、エマは慌ててベッドの上に正座して首を横に振った。
「団長のせいじゃありません!謝らないでください…
私の発言が事の発端ですし、団長のことを自分の都合の良いように振り回して傷つけたのは私の方です、だから」
「分かった、エマ。もう十分分かったよ。」
必死に謝罪の意を伝えようとするエマを、静かな声が制止する。
「もうお互い謝るのは止めにしよう。暗い雰囲気のまま終わりたくない。」
「団長……」
「リヴァイと何があったかまでは敢えて聞かないが、まだ諦めるには早いんじゃないか?」
「なぜそんなことを…」
「顔に出てる。そんな状態で簡単に諦めがつくはずがないと思うが、どうだ?」
「……………団長には敵わないですね…」
エマは先のエルヴィンと同じような言葉を返すと、眉を八の字にして困ったように笑った。
この人の前ではいくら仮面を被って誤魔化しても全て見透かされてしまう。
そしてこの透き通った瞳に見つめられれば、正直に話すこと以外許されないように感じてしまうのだ。
「…エルヴィン団長の言う通りです。確かに未練はあるけど、もういいんです。私がいくら足掻いてもたぶんもう叶わないことなので…」