第15章 喪失 ※
執務机の椅子に腰かけ、片手で頬杖をついてハンジの開発した最新巨人捕獲兵器の資料に目を向けていた。
「はぁ………」
リヴァイの口から深いため息が出る。
結局今日もギリギリまで作戦の調整に追われ、気が付いたら夜だった。
オルオの代わりに入った兵士のために、ここ二日間は夜もそいつの自主訓練に付き合った。
二日かけてみっちり見てやったからあいつはもう大丈夫だろう。
そこには俺も一安心している。
だが班再編に伴う諸々の忙しさから、ここ二、三日はエマと会話らしい会話さえ出来ていない。
エマとは何度かここで顔を合わせたが仕事の会話だけだったし、今夜ぐらいはゆっくり中庭に行きたかったが、中途半端にしたままの仕事を片付けていたらもうこんな時間だ。
おそらくエマはもういないだろう。
このまま明日、壁外へ出るのか…
今回の調査で死ぬつもりなんてもちろん毛頭ないが、壁外へ行く前にもう一度エマに会いたかった。
死ぬつもりはないのだが、やはり心残りしたまま戦場へ赴くのは嫌だと思ってしまう。
あいつの顔を一目見ないと壁の外へ出る気にもなれないなんてな。
いつの間にか自身の中で、エマの存在がとても大きくなっていることに驚いていた。
……一か八か今から行ってみるか。
ガタと席を立ち、ドアノブに手をかけた。
その時、リヴァイがドアノブを回すより先に静かに扉が開いたのだった…
「兵長、夜分にすみません。」
扉が開くまでの一瞬の間に、この扉の向こうにいるのはもしかしてエマ?と思ったのだが、そこに立っていたのは想い人の容姿とはかけ離れたブロンド髪の女。
あまり面識のない女兵士だった。
「あぁ、何か用か?」
リヴァイは無意識にエマかもしれないと思った浅はかな自分を心の中で自嘲しつつ、目の前の女に端的に用件を聞いた。
「明日は壁外調査なのに、まだお仕事ですか…?」
「仕事は今終わったが、これから行くところがある。お前の用件は何だ?」