第15章 喪失 ※
「いてててて……」
「オルオ無茶しすぎ!打ちどころが悪かったら捻挫だけじゃ済まなかったかもしないんだからね!」
ここは兵舎内の医務室。
その一角に設けられたベッドに横たわるのは、リヴァイ班のオルオだ。
右手には包帯が巻かれ、動かせないように固定されている。
オルオの傍らには同じくリヴァイ班のペトラが付き添っていた。
「あの距離は俺ならやれるハズだった。ただ少しタイミングがズレただけだ。」
「もう!その過信が危ないっていつも言ってるでしょ?!三日後に壁外調査だって言うのに、皆にも迷惑掛けて!」
訓練中にそこそこの高さから転落して手首を捻挫したらしいオルオ。
自身の過失で事故になったようだが、相変わらず減らず口を叩くオルオにペトラの叱責の声が飛んでいた。
その時、二人の背後から声した。
「具合はどうだ?」
「兵長!お疲れ様です!先生のお話では全治2週間ほどかかるそうです。」
「そうか。」
「兵長…すみません、こんな大事な時に、俺……」
先程までの強気な態度はどこへ行ったのか、リヴァイを前に小さくなるオルオ。
「まったくだな。これが壁外だったらお前はとっくに巨人のくせぇ口の中だ。」
リヴァイの返事にオルオはさらに体を縮めて小さな声で謝罪した。
「顔を上げろ、オルオ。お前の判断ミスで怪我したのは確かだが、これが訓練中で良かった。これで実践じゃ同じミスはしねぇだろ。
だが生温いことを言うつもりはねぇ。さっさと治して次回の任務には万全で挑めるようにしろ。いいな?」
「は、はい…へいちょう……必ず…!」
リヴァイの言葉は不器用だが、その奥に優しさを感じる。
オルオはそれを感じ取り、今にも泣きべそをかきそうな顔でリヴァイを見上げるのだった。
「ペトラ、俺はエルヴィンにこのことを報告しに行く。お前はエルド達の所へ戻って三人で訓練を続けろ。」
「はいっ!了解しました!」
リヴァイはそう言い残すと医務室を去った。
「……え?!ちょ、オルオ泣いてんの?!」
「うるせぇ!ちょっと目にゴミが入っただけだ!」
オルオが泣いている。
リヴァイの優しさに感動しているだけだが、嗚咽まで漏らして…
そんなオルオを眺めるペトラの目は呆れかえってしまっていた。