第15章 喪失 ※
「心配か?」
「心配です……兵長達にもし何かあったらと思うと怖くて堪らなくて。」
エマは不安そうな声色でリヴァイに訴えた。
するとリヴァイは“そうか”と小さく呟いたあと、話を続ける。
「壁外に出りゃ不確定要素だらけだ。お前も知っての通り俺達の命の保証なんてどこにもねぇ。
だがそんな中でも必死で足掻く。それが人類の希望に繋がると信じてな。それが調査兵団だ。」
「…………」
リヴァイの信念を持った言葉にエマは胸を打たれた。
改めて、自分がこれまで生きてきた世界とのギャップを思い知らされる。
たぶん今、自分が何を言い返したってすべて安っぽい言葉に聞こえてしまうだろう。
それ程までにリヴァイの言葉には重みがあった。
「兵長……どうか無事に帰ってきてください。」
エマにはこれくらいしかかける言葉が見つからなかったが、心の底からそう願わずにはいられなかった。
真っ直ぐリヴァイを見つめれば、その三白眼はしっかりとエマを捉えて答える。
「馬鹿言え、俺を誰だと思ってやがる。」
「……じ、人類最強の兵士長…ですか?」
「あぁそうだ。俺は巨人を殲滅させるまで絶対死なねぇし、これまで死んで行った仲間の命も絶対無駄にはしねぇ。それと……
エマ、お前がここに居てくれるなら俺は何度でも生きて帰る。」
その言葉に驚いて目を見開くと、真剣な眼差しのリヴァイと視線が交わる。
エマは何故か涙が出そうになるが、どうにか堪えた。
「……絶対ですよ。絶対に、生きて戻ってきてください。待ってますから。」
「あぁ。」
短い返事だったが力強い返事だった。
そして今度はふっと表情を緩めると、頭をわしゃわしゃと撫でられる。
「お前も俺が留守の間、また勝手にどっかほっつき歩いたりするんじゃねぇぞ。」
「は、はいっ!」
リヴァイの手の温もりが優しい。
幸せ。
………どうかこの小さな幸せが壊れてしまいませんように。