第15章 喪失 ※
「……私の勘違いならいいんだ。でももし無理しているのなら放ってはおけない。
前にも言ったが、君がここで笑って暮らすためなら私はなんだって力になるつもりだから、もっと頼ってくれていいんだよ。」
優しくて真摯な言葉はエマの心を揺さぶった。
「ありがとうございます…団長。でも今は本当に大丈夫です。あ!でもでも、今後何か困ったことがあったら是非頼りにさせてください。」
「もちろんだ。あまり一人で頑張り過ぎないでくれ。私はいつでも君の味方だから。」
「はい…」
こんなにも真っ直ぐ自分を思って言ってくれるエルヴィンに申し訳ないと思いつつも、彼にリヴァイのことは話せない。
エルヴィンは穏やかな表情のままエマの髪を撫でた。
この笑顔を自分の手で壊してしまいたくない。
エマは心の中でエルヴィンに対して嘘をついてしまったことを謝っていた。
それから数日が過ぎた。
エルヴィンとはあの朝以来ゆっくり話をしていない。
顔を合わせることもほとんどなく、忙しなく団長室と会議室を往復しているようであった。
壁外調査まで一週間を切り、きっと大忙しなのだろう。
兵団内もかなりバタバタしてきている。
一方、エマとリヴァイは中庭での一件からどんな感じなのかと言うと、一見まぁ普段通りだった。
しかしエマは今まで以上にリヴァイの言動に過敏になっていた。
あの日以来、諦めかけていた気持ちを結局また揺るがし始めてしまっているのである。
しかしエマにはリヴァイかどう思っているのか正直よく分からないままだった。
露骨に態度に出すわけでもなくいつもと変わらない様子だし、自信のなさも相まって、あの夜の発言を前向きに受け取っていいものなのか未だに悩んでいたのだ。
しかし、そんな二人にもひとつだけ変化したことがあった。