第14章 心を癒すのは
「少しは元気になったみたいだな。」
「そ、そうですかね?」
今、何でこんな話題を振ってくるんだろう。
リヴァイの言葉にどう返したらいいのか分からず、エマは曖昧な返事になってしまった。
「…悪かったと思ってる。」
「え?」
「あの時、お前を期待させて裏切るような真似をして。」
あの時……10日ほど前の兵長の執務室での出来事のことだ。
兵長にキスをされて、気持ちを聞いたら遠回しに振られて、湧き上がった感情に任せて兵長に怒ってしまった時のこと…
「いえ…私も勝手に勘違いしたのが良くなかったので気にしないでください。それにもう平気ですから。」
本当にそうだ。
確か出会った直後にも同じような勘違いをして勝手に傷ついたことがあったっけ…
「何回同じ失敗をすれば気が済むんですかね、私。ほんとすみません…」
エマは自虐的に笑ったあと、申し訳なさそうに謝罪した。
「…いや。」
リヴァイはそんなエマの目を真っ直ぐ見据えて口を開いた。
「俺の方こそお前を振り回してばかりで何度も傷付けてる。
すまない。」
「……どうしたんですか?いつもの兵長らしくないです。私ならこの通りもう立ち直ってるので大丈夫ですよ!」
兵長の様子がなんだか変だ。
自分からこんな話を振って、さっきから謝ってばかり。
エマはリヴァイに笑顔を向けるが、リヴァイはピクリとも笑わず、真剣な顔をしたままである。
その様子に次第にエマもヘラヘラするのを止め、真顔になった。
次に何を言われるのだろうか。
何を………
……兵長に自分への気持ちがないことはよく分かっているから、そういう話だったら正直もう聞きたくない。
本当に、せっかく立ち直れて来てるんだ。
お願いだからもう掘り返さないで欲しい………
リヴァイが次に発する言葉を色々と想像しているうちに、泣きそうになってきてしまう。
「エマ。」
リヴァイにまた名前を呼ばれ、不安色の視線を交える。
しかし次にリヴァイから発せられたのは、エマが予想もしなかった言葉であった。