第14章 心を癒すのは
背中を背もたれに預けて足と腕を組みながら夜空を見上げるリヴァイの姿を、チラチラと盗み見るエマ。
さっきまで綺麗だとただ純粋に星空を眺めていたエマの瞳は、いつの間にか隣のリヴァイに釘付けだ。
……綺麗な横顔
星明かりを受けてぼんやりと浮かび上がった、鼻筋の通った色白の横顔はなんとも形容しがたい美しさを放っていた。
「どうかしたか。」
「あっいや!なんでもないです!!」
美しい横顔に見とれていると、リヴァイが急にこっちを向いたから心臓が跳ね上がった。
「今日は新月だから、星の光が目立っていいな。」
「…そ、そうですね!」
また空に視線を戻したリヴァイに合わせるように、エマも見上げる。
リヴァイは星空を見上げたまま穏やかな口調で言ったが、対するエマの心中はまったく穏やかではなかった。
なんでこんなにドキドキするの…
いくら久しぶりにプライベートで会うからだって言っても、ちょっと過剰に反応しすぎだよ…
意識しないよう考えるほど、その意志とは反比例に心臓の音は大きくなっていく。
本当にどうしてしまったというのだ。
「エマ。」
「はいっ」
リヴァイが視線を空にやったまま名前を呼べば、エマの心臓はまた小さく跳ねる。
しかし続けて投げかけられた質問に、エマは固まってしった。
「今日は楽しめたか?」
「え…?」
「ハンジから聞いた。エルヴィンと出かけたんだろ?」
「あ……あぁそうでしたか。…た、楽しかったです。」
さっきまであんなに充実した気持ちで今日の余韻に浸っていたというのに、何故かリヴァイにはその心を悟られたくなくて、なるべく感情を出さないように答えてしまった。
正直兵長にこのことはあまり知られたくなかった…
「そうか。」
短く相槌を打つリヴァイの表情は、暗いし横目ではよく分からない。
そして声色からもその感情まで読み取ることは出来なかった。