第14章 心を癒すのは
だいぶ日も落ちてきた頃、エマ達は兵舎へ戻った。
「団長、本当にありがとうございました!今日一日すごく楽しかったです!」
「私も楽しかったよ。こちらこそ付き合ってくれてありがとう。」
「菜の花畑はすごく素敵だったしお昼に食べたお肉は美味しかったし、お店巡りも本当に全部楽しかったです!」
「そんなに喜んでくれて嬉しいよ。今日はとても幸せな一日だった。」
エルヴィンは門の前で堂々とエマの頭を自分の胸に寄せると、滑らかな髪にキスを落とした。
「ちょっ、こんなところでやめてください。誰かに見られたら…」
「別に見られても構わないよ。」
「私は困ります!」
「ハハハ、それは良くないな。すまなかった。しかしその言い方だと、誰もいない場所ならこういうことをしても良いことになるな。」
エルヴィンはエマの耳に唇を寄せて悪戯っぽく囁くと、エマはその耳を真っ赤にしてすぐに否定する。
そんな姿がまたエルヴィンの心を鷲掴みにして離さない。
「冗談だよ、そんなに不貞腐れないでくれ。」
「団長はいつも冗談と本気の境目が分かりにくいです…」
「悪かった、エマ。」
エマはエルヴィンの言葉に頬を膨らませると、エルヴィンは軽く謝罪しながら風船のように膨れた頬を人差し指でつついた。
その光景は傍から見たら、まるで恋人同士のようだ。
「ふふ、許してあげます。」
エマはエルヴィンに柔らかく笑った。
今日は本当に充実した一日だった。
花畑ではキスをされてしまったけれど、それ以降はただたわいのない話をしながら色んな所を歩き周っただけで、何も起きなかった。
団長は博識で話題もたくさん持っていてどの話も面白かったし、私の話も楽しそうに聞いてくれて、ただ街を歩くだけでも全然退屈しなかった。
これまでのこともあって最初は変に意識してしまってちょっと身構えていたけれど、純粋に楽しく団長との時間を過ごせて良かった。
疲弊していた心も随分と活力を取り戻した気がする。
門をくぐったエマの気持ちはとても晴れやかであった。