第14章 心を癒すのは
「団長!ここ!このお店に入ってみてもいいですか?!」
「あぁ、行こう。」
時刻は午後になり、この時期一番暖かく感じられる時間。
エルヴィンとエマは花畑を後にしたあと、近くの比較的大きな街で昼食を食べてブラブラしていた。
さっきからエマの行きたいところにとことん付き合うつもりで歩き回っている。
どうやら彼女にとってこの街は興味を引く店で溢れているらしく、少し歩いては店に入って中を物色する、を繰り返している。
余程楽しいらしく、まるで背中に羽根でも生えたかのような軽い足取りで次から次へと足を進めていた。
「団長見てください!この人形、すごく可愛い!」
「…エマはなかなかハイセンスだな。」
そしてこれはさっき分かったことなのだが、エマが可愛いという物はなんだか個性的な代物ばかりだった。
今見せられた木彫りの人形も二頭身で顔が極端に大きく、不気味な目鼻立ちをしていて、どう見ても私の目には可愛くは映らなかったのだが、本人はとても気に入っている様子だ。
しかしこうして目をキラキラさせながら人形を見せてくるエマを見ていると、人形が可愛いかどうかなんてどうでもよくなる。
「エマ、それを貸しなさい。」
「え?」
エマの手から人形をひょいと取り上げると、会計のカウンターへ向かった。
会計が終わって人形を渡すと 、エマは慌てた様子出謝ってきた。
「すみません団長…」
「このくらいさせてくれ。これを作った彫り師はもう引退していて、これが彼の作品の最後の一点だったそうだ。」
「そうなんですか…ありがとうございます。大切にしますね!」
エマは人形を大事そうに抱えて丁寧にお礼を言っていた。
「すみません、色々としてもらってばかりで。」
「私がしたくてやってるだけだから気にすることはない。それに今日は君の嬉しそうな顔がたくさん見れて私も満足してるんだ。」
エマは安心したように微笑んだ。
それだけで本日何本目かの矢がエルヴィンの心臓に突き刺さった。
花畑でキスをしたのがよくなかったか…
キスをしてからずっと悶々としている。
中途半端に昂った欲を必死に押さえつけながら、エマの隣を歩いた。