第14章 心を癒すのは
リヴァイは考えた。
エマと一緒になれたとして、いずれ来るであろう別れに果たして自分は耐えられるのだろうか。
“自分が傷付くのが怖いんでしょ?”
まさにハンジの言う通りだ。
俺は結局自分を一番に守りたいんだ。
それに、調査兵という立場である限り、あいつを幸せにしてやれる自信もやっぱり持てない。
そのくせエマに対し湧き上がる情欲には逆らうことをせず手を出した。
人類最強と言われている人間は、こんなにも中途半端で臆病で弱い奴だ。
………そうだ。
こんな奴より、エルヴィンの方がよっぽどエマを幸せに出来るんじゃねぇか?
あいつは最初からエマに対して実直だった。
エルヴィンなら中途半端な俺みたいじゃなく、真っ直ぐにエマを愛し大切にするだろう。
エマにとってもエルヴィンにとっても、二人がくっついた方がいいに決まってる。
……もしかしたら今頃、恋仲に発展してたりしてな。
……………
…………
……………
なんなんだ…この胸のざわめきは。
エルヴィンとエマで幸せになれればそれで良いじゃねぇか。
それで、良いはずだろ……
心の中に小さな炎が燻り出す。
そしてその炎はエルヴィンとエマのことを考えれば考える程、思考とは関係なく熱く燃え上がっていくようだった。
その時、不意にハンジの言葉が頭を過ぎる。
“リヴァイには後悔しない選択をして欲しいかな”
あのクソメガネ……余計なことばっかり言いやがって。
「…チッ!!」
盛大な舌打ちをかまし、何かを考えるように俯いた。
俺はどうする?どうしたい?
俺は………
俺は……
俺は。
「…………」
しばらくして顔を上げゆっくりと前を向く。
その目からは先程までの迷いは消え、何かを決心したような強いものへと変化していたのだった。