第14章 心を癒すのは
…こいつはいきなり何を聞いてきやがる。いっぺん削いどくか?
大股で詰め寄ってきたハンジを、嫌悪感をたっぷりと含んだ瞳で睨みつけた。
しかしハンジもリヴァイに劣らぬ眼力で視線を交えたまま続ける。
「…何も言わないってことは、肯定と見なすけど。」
二人の間に少しの沈黙があったのち、リヴァイは閉ざしていた口を開いた。
「………あいつは、俺と一緒になったところで幸せにはなれない。」
エマに言ったことと同じことをハンジに言ってやった。
ハンジは俺の発言に驚いたように目を見開くが、すぐに冷静さを取り戻して話し出す。
「…リヴァイの言いたいことは分からなくもない。彼女がいつまでここにいれるか分からないしね。一緒になれても、近い将来必ず“別れ”がくることは避けられない。」
ハンジは俺の一言で、俺の言いたいことも諸々理解したようだった。
エマが好きだ。
この気持ちは認めた。
そしてたぶんエマも同じ気持ちだ…
「で、お前は好き同士だが訳ありだからくっつくことが出来ねぇ二人を取り持とうと、俺のところに来たってわけか?」
だが自分の中でもう答えは出したんだ。
今更あいつとどうこうなるつもりはない。
「まぁ大体正解かな。」
「チッ、言いたいことがあるならハッキリ言え。」
リヴァイは痺れを切らして再びハンジを睨みつけた。
するとハンジはリヴァイの座る執務机に両手を付き、リヴァイにその真剣な顔を近づける。
「リヴァイ、傷つくのが怖いんでしょ?」
「は、何言って」
「やっぱりなー、その顔見りゃ分かるよ!」
ハンジはニヤリと口端を上げ、明るく言い放った。
その態度に一瞬、本気でコイツのことを削いでしまいたい衝動に駆られたのは言うまでもない。
「エマの幸せを思って言ったのは本当なんだろうけど、その言葉は自分に言い聞かせるためでもあったんだろ?その証拠に、さっきめっちゃくちゃ辛そうな顔してたよ。」
「…………」
コイツは元々洞察力に優れていたが、こんな所でそれが役に立つとは。
それに、自分がそんな表情をしていたことには全く気付かなかった。
感情を表に出すことは不得意だったはずが、エマのことが絡むと、俺も大概分かり易くなるらしい。