第14章 心を癒すのは
門の前で待っていると、小走りで近付いてくる人影。
「団長、おはようございます!お待たせしてしまってすみません!」
息を上げて挨拶をするエマの姿に、思わず見とれてしまった。
黒いコートの下から覗くワンピース。
落ち着いたネイビーのふくらはぎまで丈のあるそれは、腰の部分が緩めに絞られていてくびれを少し強調するようなデザインだ。
それに加えて胸元には控えめに白いレースがあしらわれ、清楚な女性らしさを漂わせている。
そして極めつけはヘアースタイルだ。
いつもは髪を後ろでひとつに結んでいるのが、今日はサイドの髪を繊細に編み込んで、ハーフアップにしてある。
華やかなだが派手という訳ではなく、可憐なエマにまさにぴったりの髪型だ。
彼女の様子は、少女のあどけなさが残る普段とは違い、色気のある大人の女性の雰囲気さえ感じさせる程に様変わりしていたのであった。
「おはよう、エマ。私もさっき来たところだ。それにしても今日は一段と可愛いな。」
いけない。気を抜くとすぐに頬が緩んでしまいそうだ。
自分とのデートにまさかこんなに着飾って来てくれるのが予想外だったのと、想像以上に破壊力のあるエマのめかした姿。
エルヴィンはニヤつきそうになる頬を誤魔化すように片手で顎を何度か撫でた。
「あっありがとうございます!」
少し俯いて照れくさそうにするエマ。
「その服はハンジに貰ったのか?」
エルヴィンは気持ちの昂りを気付かれないように平然を装って問いかけた。
最初に何着かハンジから服を貰っていたはずだが、ファッションには全力で無頓着なハンジがもしこの服を選んでいたのなら、彼女に賞賛の声を送りたい。
それ程にこのワンピースも似合っていた。
「はい、貰った服の中に入ってました。他に着る機会もないので着てみたんですけど…変ですかね?」
自信が無さそうな顔をして聞いてくるエマ。
……帰ったらハンジに是非礼を言おう。
「いや、とても似合っている。すごく可愛いよ。」
「良かったぁ。」
褒められ嬉しそうにしている頭を撫でてやると、上目遣いでチラリとこちらを見ながら顔を赤らめる。