第14章 心を癒すのは
まさかここでデートの誘いが来るなんて…
「あの…とても嬉しいんですけど、調査前の大事な休日に私なんかに時間使ってもらっていいんですか?お疲れのようですし、もっと体を休めたり、その…」
突然の誘いに戸惑いを隠せず少し早口になってしまうエマ。
そんな彼女を見てエルヴィンは微笑みを零した。
「本当に優しいんだな君は。お気遣いありがとう。だがせっかくの休日だからこそ君と居たいんだよ。君といた方が疲れも癒される。」
また涼しい顔でさらっと言うエルヴィン。
「じゃあ、私で良ければ…」
「ありがとう。」
自分といた方が疲れが癒える、なんて言われてしまったら断ることなんてできない。
少しぎこちない返事になってしまったが、エルヴィンは嬉しそうにしていた。
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それから二日後の休暇日、エルヴィンとのデート当日だ。
今日は朝から落ち着かず、エマはいつもより早く目が覚めてしまった。
いつもより入念に朝の掃除をしたが、それでも時間を持て余したので、久しぶりに髪をセットしてみることにした。
鎖骨あたりまで伸びた黒髪を、両サイドから緩く編み込んでハーフアップにする。
仕上げに、お気に入りのホワイトとゴールドの髪結紐で結び目を彩れば完成だ。
久々にしては上手くできた方だ。
ハンジから貰った私服の中にあった綺麗めのワンピースも、こんな時ぐらいしか着る機会がないので着てみたが、これがエマ的にはかなりツボだった。
元の世界じゃちょっと浮きそうで絶対着ないようなデザインだが、こっちではこんな格好も堂々と出来てしまう。
少しコスプレ感覚になって、それがまた楽しかった。
エマは鏡に写る久々におしゃれをした自分を見ると心が弾んだし、なんだか最近の憂鬱事もすっきりして気分も晴れやかになった気がした。
準備を終え、待ち合わせ場所の門まで歩いて行く。
門が見え、そこに一頭の白馬と長身の男の姿を確認すると、心臓が一度音を立てた。
これから一日、団長と二人きりなんだよね…
姿を見たら急に実感してしまい、緊張してしまう自分をどうにか落ち着かせながらエルヴィンの元へ急いだ。