第2章 始動
ハンジが冗談交じりに言うと、リヴァイはテーブルから身を乗り出し、向かいに座るハンジの頭にゲンコツをメリメリと押し込んでいた。
「もう、リヴァイは力加減ってもんを知らないんだから〜」
ハンジは“イテテ”と頭を抑えながらもどこか楽しそうだった。
「楽しくやるのは結構なことだが、明日の訓練には遅刻するなよ、クソメガネ。」
いつの間にか食事を終えたリヴァイは、そう言うと静かに席を立った。
…あいつはあんな風に笑うのか。
今日もハンジとのやり取りは面倒くさいことこの上なかったが、昨日から緊張続きだったであろうエマが初めて見せた笑顔に、リヴァイは安堵していた。
自分じゃあそこまでの笑顔は引き出せなかっただろう。
今日のところはハンジに感謝するか、と思った。
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夕食後、大浴場でさっぱりしたエマは、ハンジの部屋にいた。
元々女性兵士は少ない上に休日も重なって、風呂場は貸切状態だったのでゆっくり入ることが出来た。
ハンジに見繕ってもらった部屋着を着て、椅子に腰掛け淹れてもらった紅茶を啜っている。
お風呂は後で適当に入るから〜、と言って一緒に行かなかったハンジは、今も日中着ていた私服のままだった。
「あの、ハンジさん。」
「んー?」
「リヴァイさんって、どんな人なんですか?」
「プッ!
…エマはリヴァイのこと、どんな人だと思った?」
ハンジは突拍子もない質問に思わず吹き出し、興味深そうに質問返しをした。
「初めて見た時は、睨み殺されるかと思いました。」
「アハハハハハ!!」
わりと真面目に答えたエマに対し、ハンジは大声で笑い出した。
「まぁ無理もないよね。目つきも口も悪いし、誰も寄せ付けないようなオーラ放ってるしね。」
「あっ、でも!実は、すごく優しい人なんじゃないかって思います。」
昨日は服を貸してくれたり、ベッドで寝ていいと言ってくれたり、それから、
元の世界に戻る方法を一緒に探してくれると言ってくれた。