第2章 始動
夕刻一
エマの姿は兵舎の食堂にあった。
朝から付き添っているハンジも一緒だ。
今日は休日のため外出している兵士も多いようで、食堂の中は人の姿もまばらだ。
だからエマが歩いていてもあまり目立たなくて、少しホッとした。
「おっ!リヴァイー!」
ハンジは食事が乗ったトレーを、リヴァイの座っているテーブルの向かい側に置くと、後ろを歩いていたエマに自分の隣に座るよう促した。
「リヴァイさん、お食事中失礼します。」
「…意外と元気そうだな。」
「え?」
テーブルにつくなり発せられたリヴァイの言葉の意味が、またもエマにはよく分からなかった。
「クソメガネに一日中連れ回されて、今頃げっそりしてるだろうと思ってたんだがな。」
「エマったらこの世界のことも巨人の話も、すんごく興味津々で聞いてくれてさ!私もついつい喋りすぎちゃって!」
聞けば、朝、団長室で別れてから一通り兵舎を案内した後、ハンジの部屋でこの時間まで話をしていたらしい。
リヴァイは驚いた。こいつもひょっとして変わり者なのかと思った。
ハンジの異常とも言える巨人への愛着心。これを全開にされて永遠とその話を聞かされるのは自分からしたら拷問と同じだ。
「ハンジさんのお話はすごく新鮮で楽しかったですよ!」
「お前、ハンジが歳上だからって気使うこたねぇぞ。本心を言ってみろ。」
「え?えと…ほ、本心なんですが…」
ハンジの話を楽しんで聞いていた…?
半日以上も…?
リヴァイは目を丸くし、馬鹿な、とでも言いたげな顔をしている。
「どうやらお前も相当な物好きらしいな。」
「物好き…ですか。あ、そうだ!夕食後、またハンジさんのお部屋で話をするんですけど、よかったらリヴァイさんも一緒にどうですか?」
エマはリヴァイの言葉に首を傾げて少し考えていたが、ふと思い出したようにリヴァイにもハンジとのお喋りを提案した。
それはそれは楽しそうな顔で。
「いや、俺は遠慮しておく。」
「あー、ダメダメリヴァイは。ノリの悪い男だからさ!」
「あ?誰が?」
「いててててててっ!!」
「だ、大丈夫ですかハンジさん!?」