第14章 心を癒すのは
「か、会議終わったんですね?」
漂ってしまったこの妙な空気を変えようと、適当な言葉をエルヴィンに投げかける。
「あぁ、今終わったばかりだ。君も今日は終わったのか?」
「はい、さっきちょうどキリがついて。」
「そうか。」
エルヴィンは短く相槌を打つと、ふーっと息を吐きながら応接ソファへ腰を下ろした。
「お疲れのようですね。お茶飲まれますか?」
「いや、大丈夫だ。気遣いありがとう。」
エルヴィンはエマの提案を丁寧に断ると、胸ポケットに忍ばせた手帳を開いて眺め始めた。
?
団長は何の用でここに来たんだろう…
黙って手帳を眺めるエルヴィンを横目で見ながら、散らかっていた書類を片付けていく。
エルヴィンから告白まがいなことを言われた日から、彼にはやはり意識してしまうことが増えた。
エルヴィンもエルヴィンで、あの日以来、エマへの好意を隠さず表に出すことがさらに多くなっていて、特に二人きりになるとそれは顕著だった。
たぶん宣言通り遠慮なくアプローチしているだけなのだろうが、エマにとってはその言動にいちいち心をかき乱されてばかりだ。
なるべく普段通り接するよう心掛けているけれど、きっとエルヴィンにはそんなことはお見通しなのだろう。
片付けながら考えていると、不意に名前を呼ばれた。
ちょうどエルヴィンのことを考えている最中だったので、エマは思いの外驚いてしまい、大きく肩が揺れてしまう。
「なんでしょうか?」
「今度の休暇日は空いているか?」
エルヴィンはいつの間にか視線を手帳からエマへと移していた。
「明後日ですか?空いてますけど…」
「それなら、一緒に出かけてくれないか?」
エルヴィンはニコリと口角を上げた。
こ、これはもしや、団長が予告していた……
「デートだよ。連れていきたい場所がある。」
エルヴィンがエマの心を先読みするかのように続けて言うと、エマは思わず言葉に詰まってしまった。