第14章 心を癒すのは
翌日一
この時期にしては珍しく雨が降っていた。
「なかなか止まねぇな。」
「そうですね。今日はずっとこんな天気でしょうか…」
「どうだかな。まぁたまにはこんな日もいいが。」
執務室の大きめの窓から外を眺めるリヴァイ。
その姿を横目で見ながら机に向かうエマ。
今日は朝から雨が降り続き、昼を跨いで午後になってもなかなか止む気配はない。
こうも雨が降っては外での訓練もできないので、今日は久しぶりにリヴァイと執務室に篭っている。
そういえばこんなに長い時間二人でいるのは、あの日以来のことだった。
あの日、感情に任せてリヴァイに乱暴に言葉をぶつけてしまってから、リヴァイとはあまりまともな会話が出来ていなかった。
調査が決まってからリヴァイは毎日訓練に行っていたから、一緒にいる時間が激減したのが大きいのだが、あの日の後ろめたさと気まずさで彼を少し避けてしまっていたことも理由のひとつに当たる。
リヴァイもそんなエマの様子にはきっと気づいていると思うが、今回は前のように避けている理由を直接聞いてくることはなかった。
ただ、リヴァイからは気まずさは全く感じられず、今まで通り普通に接してくる。
そういえば憲兵事件の後も、エマはあの夜のことを思い出してはしばらくぎこちない態度しかとれなかったのだが、対するリヴァイはあまりにも普通すぎて肩透かしを食らったような気分になっていたのを思い出していた。
そして今回も例に漏れず、普段通りすぎるリヴァイと半日も一緒にいると、知らぬ間に普通に喋っている自分に違和感さえ持たなくなっていったのだった。
「今から俺は会議だが、お前はここで残りの仕事を片付けてくれ。その後続けて俺の班で小会議をする予定だから戻りは遅くなる。お前は適当なところできりを付けて上がっていい。」
リヴァイは会議で使う資料を纏めながら、エマを横目で見た。
「分かりました。」
エマはハキハキと返事をしたが、今日はこれでリヴァイと一緒に居れる時間が終わるのかと思うと、少し寂しい気持ちになってしまった。