第13章 板挟みの中で
「……すみません、お忙しいのに…」
「そんなことは今はどうだっていいの!それより気分はどう?少しは落ち着いた?」
研究室の一角に設けられた簡易的なスツールに座り、俯いた顔をゆっくり上げるエマ。
元々狭くはない研究室だと思うが、難しそうな本とか実験道具や研究資材とかが所狭しと乱雑に置かれていて、かなりの圧迫感がある。
エマはひとしきり泣いたのと、黙って背中を摩ってくれていたハンジのおかげもあって、幾分か落ち着きを取り戻していた。
「…はい。ハンジさん、ありがとうございます。」
エマはハンジに頭を下げた。
「どういたしまして。で……大好きなエマがあんな顔して泣いてるとこ見ちゃったしこのまま放って起きたくはないから、良かったら話を聞かせて欲しいんだけど…
まぁ話したくないこともあるだろうし、無理にとは言わないけどさ。」
ハンジはエマを気遣いながら言うと、彼女は少し考えるように間を置いてから話し出した。
「……ハンジさん私…気付けたのかもしれません。」
ポツリポツリと言葉を紡ぎ始めたエマを、ハンジは黙って見守る。
「ハンジさんに前に話したように、今までずっと、自分の気持ちがよく分からなかったんです。」
「うん。」
「でもさっき分かった気がしました。
………私……たぶん兵長のことが好きなんです。」
エマはハンジの目をまっすぐ見つめて、はっきりと自分の気持ちを告白した。
ハンジは一瞬目を丸くしたが、その目はすぐにエマを優しく包み込むようなものに変化し、そのままエマの話に耳を傾ける。
「ハンジさんに相談した時から…………いや、今思えばたぶんもっと前からそうだったんじゃないかって。」
エマの脳裏に、この世界にやってきてすぐに森で遭難しかけた時の記憶が蘇る。
あの時、一時はリヴァイに惹かれていたような気がしていたが、結局これは恋ではないと結論付けたはずだった。
でも、きっと違う。
今なら分かる。
本当はあの時から……