第13章 板挟みの中で
しかし記憶の中にリヴァイの姿が浮かぶと、途端に胸が締め付けられるような感覚が湧き起こり、エマは徐々に表情を曇らせた。
「でも………兵長は同じ気持ちじゃありませんでした。」
直接的ではなかったが、彼の言葉はどう考えてもそういう意味にしか捉えられなかった。
そしてこうして声に出してしまうことで、心にできてしまった傷がまた抉られる。
また視界が滲み出す。
エマは一度大きく瞬きをすると、その目に蓄えきれなくなった大粒の雫をこぼした。
「……これって、“失恋”って言うんですよね?」
頬にひとつまたひとつとの涙の跡を作りながら自虐的に笑って見うエマ。
そのいつもにも増して小さく見える体を、ハンジは勢いよく抱きしめた。
「エマ、そんな顔して笑わなくていい。ここには私しかいないんだし、我慢しないで。」
エマの頭を包み込むようにして自身の胸に優しく添えると、エマはその中で涙を流した。
静かに嗚咽を漏らすエマを黙って抱擁し続けた。
先程のエマの話では具体的な説明が抜けていて、どういう経緯で失恋に至ったのかは分からない。
そもそもエマは自分の思いをリヴァイにちゃんと伝えることが出来たのかもよく分からないままだ。
それに…
そしてハンジはもう一つ大きな疑問を抱く。
リヴァイはなぜエマをこうして傷つけてしまったのか。
だって、リヴァイも相当エマのことが好きだろうというのは、エマが相談してくれた時の話や、その後の普段の彼の様子から十分に感じ取っていたから。
エマが自分の気持ちにやっと気付けたというのに、リヴァイはなんでこんな真似を…
色々と考えを巡らせてみるが妥当な答えが見つからず、自分の胸で泣き続けるエマの頭を優しく撫でることしかできなかった。