第13章 板挟みの中で
「さてと…今日も始めるか。」
壁外調査が決まってから、夜はめっきりこっちの部屋に籠ってばかりである。
というのも、今度の調査で新しく開発した巨人捕獲兵器を試せることになったから、実施に向けた調整で色々と忙しいわけだ。
研究室のある棟は兵士寮や幹部棟からも離れていて、ほかの兵士が出入りすることはほとんどないから、静か作業に没頭するには持ってこいである。
今日もきっと夕食はモブリットが持ってきてくれるだろうから、早々に取り掛かってしまおう。
今は食事をする時間さえも惜しい。
そんなことを考えながら長い廊下を歩いていると、目線の先にうずくまる人影らしきものを見た。
「……誰かいるの?」
日もだいぶ落ちた薄暗い廊下に、発した声が吸い込まれていく。
返事がない…
そのまま足を進めていくと、小さく丸まった背中が見慣れた人物のものであることに気が付き、その元まで駆け寄った。
「エマ?!どうしたのこんなところで?!」
「………ハンジさん…」
ハンジはエマの顔を見るなり、これはただ事ではないと察する。
「とりあえず、私の部屋においで?」
ハンジは小さく頷くエマの肩をそっと抱き、自分の研究室へと連れていった。