第13章 板挟みの中で
「え……?」
リヴァイの言葉にエマの目は大きく見開かれる。
「俺がお前を好きだと言ったら、お前はどうする?」
そんな返し方、ズルすぎる。
精一杯勇気を振り絞って聞いたのに、また質問で返された。
しかもこんな質問、答えられるわけがない。
エマは瞳が零れてしまいそうなくらい目を見開いたまま、ぽっかりと開かれた口からは何も言葉を発することができなかった。
いや…本当のところを言うと、リヴァイの質問に対してまったく何も答えが見つからない訳ではないのだが…
今は先程のエルヴィンやリヴァイとの出来事があって混乱していて、正直頭の中はぐちゃぐちゃだ。
それに、リヴァイの気持ちにも確信が持てない中、いきなり思いを口にする覚悟も勇気も、エマは到底持ち合わせていなかったのである。
「………」
リヴァイは自分を見つめたまま固まってしまったエマに近づくと、頭に手をそっと乗せた。
そして、出かかった言葉を発するのを躊躇うかのように小さく息を吸って吐いた後、宥めるような声で言うのだった。
「……お前は元の世界で幸せになるべきだ。」
優しい表情だったが、瞳にはどこか切なさを含んでいたような気がした。
「…………なん、で」
リヴァイの言葉を聞くや否や、俯いて聞こえるか聞こえないかの声量で呟くエマ。
リヴァイは頭に乗せていた手を下ろし、エマの顔を確認するかのようにその頬へと手を伸ばそうとする。
が、その瞬間、彼女の手によって勢いよく振り払われてしまった。
そしてエマは顔を上げ荒々しく声を上げたのだった。
「そんなこと言うなら…最初っから期待させるようなことしないでください!!」
それは普段のエマからは聞いたことがない、怒りの感情を混じえた声。
大きな瞳には、今にも溢れ出しそうなほどの涙が溜まっていた。
エマはリヴァイと目も合わせず、そのまま勢いよく部屋を飛び出した。