第13章 板挟みの中で
エマを問い詰めてしまった。
彼女の口からわざわざ聞かなくてもおおかた予想はついたはずなのに。
聞かなければここまで嫉妬にまみれたどす黒い感情に支配されなくて済んだかもしれないのに。
それでも、二人が何をしていたのかどうしても確認したかった。
いつも自分の秘書として近くにいるエマ。
いつの間にかそれが当たり前になっていて、自分が物理的にも精神的にも彼女に一番近い存在であると無意識に思い込んでいたのかもしれない。
あの事件の時だって、自分だけがエマの傍に居れたことを不謹慎にも嬉しく思い、少しの優越感さえ感じていたのだ。
しかし、実際エマの口からエルヴィンとキスをしたという事実を聞いた時は、自分でも驚くほど激しい嫉妬心に駆られたし、何より焦った。
その先の質問には言葉を濁していたが、あの様子じゃたぶん俺が今してるようなキスをされたんだろう。
エマの身体にエルヴィンが僅かでも刻まれたのかと考えるといたたまれなくなり、エルヴィンに犯されたばかりの口内を隅々まで塗り替えてやりたくなった。
エマに触れるのは自分だけでいい。
そんな独占欲にも似た感情が知らず知らずのうちに溢れ出し、感情のまま行動に至ってしまったのだ。
こんなことを思い、行動した自分に、自分自身が一番驚いた。
唇を離したリヴァイの目に映ったのは、濡れた瞳で自身を見上げるエマの顔。
唾液で光る唇がいやらしい。
そんな顔をされてはこのまま歯止めがきかなくなりそうだ。
…だがそれではダメだ。
湧き上がる情欲に任せて彼女を抱くのは……何か違う。
今まで女を抱く時に、そんなことまで考えたことがあっただろうか。
いやない。
相手がそれなりにヤっても良い雰囲気なら簡単に行為に及んでいた。
だがエマに対しては違う。
このまま雰囲気に任せて続けてしまえそうだったが、そこに彼女の心がないのならしても意味が無いと思ってしまうのだ。
エマの心も自分のものにしたい。
リヴァイは昂った情欲を制止するようにゆっくり一度瞬きをすると、彼女から離れた。