第13章 板挟みの中で
「どういうキスをした?」
「え……」
エマは驚きで項垂れていた頭を素早く持ち上げる。
兵長はまだ続けるつもりなのか…
エマは羞恥によって目に薄ら涙を溜め、もうやめてくれと言わんばかりの顔でリヴァイを見やった。
「俺とした時のような軽いやつか?」
「…!」
不意に、強姦未遂事件の夜にされたキスのことを言われ、あの時のことを思い出して一段と心臓は煩くなっていく。
「……あの、その…これ以上は…なんて答えたらいいのか分かりません…」
執拗なリヴァイの尋問に、エマはもうギブアップ寸前だ。
出来ることなら今すぐこの部屋から逃げ出したい。
しかし先程からリヴァイの鋭い三白眼に捕えられ、エマの身体はその場から動くことすら許されていなかった。
だからこれが今の自分にできる精一杯の抵抗だとも言うように、エマは必死に言葉を紡いだのだ。
「………」
返事がないので顔を俯けたまま目線だけチラリと前に座るリヴァイへ向けてみたが、そこには何故か彼の姿が見当たらなかった。
不思議に思って顔を上げると、突然、横から手が伸びてきて顎を勢いよく引き上げられた。
そして次の瞬間、柔らかいものがエマの唇に触れる。
「!!」
エマが状況を飲み込むよりも先に、唇を優しくも強引に貪られてしまい、全然思考が追いつかない。
一瞬唇を解放されて視界がクリアになると、ついさっきまで向かいで頬杖をついていたリヴァイの顔が目の前にあった。
少しでも動けば鼻と鼻が触れ合いそうなほどの距離で、エマは予期せぬ展開にただただ身体を硬直させることしかできない。
リヴァイは熱を含ませた視線でエマの姿を絡めとっていた。
その目にじっと見つめられれば、心臓は血液を送り込む速度をさらに加速させる。
呼吸の仕方は忘れてしまいそうだった。
リヴァイは何も言わずに再び唇に触れるだけのキスをすると、今度は角度を変え、エマの唇を自分の唇で挟むようにしてその感触を味わいながら、無防備な隙間に舌をねじ込んだ。