第13章 板挟みの中で
「…そうか。」
リヴァイはエマの目を見つめた後ポツリと呟くと、顎を掴んでいた手を下ろしてソファへ座った。
あれ。
今の絶対問いただされると思ったのに…
「悪いが茶を淹れてくれねぇか。」
「あっ、はい。分かりました。」
エマはリヴァイの予想外の行動に少し拍子抜けしたが、エルヴィンのことを白状しなくて済んだので内心ほっとしながらキッチンへと向かった。
「どうぞ。」
淹れたての紅茶を差し出すと、リヴァイはいつもの独特な持ち方でカップに口を付けた。
「なんだ。俺の顔に何か付いているか?」
紅茶を啜るリヴァイの様子を黙って見ていたら、銀鼠色の三白眼がチラリとこちらを向いていた。
「いえ!付いてません!」
またこのやり取りをしてしまった…
エマは慌てて目線を逸らし、自分の紅茶を啜った。
兵長はさっきのことは知らないはずなのに、何故か後ろめたい気持ちになって兵長の様子ばかり伺ってしまう…
そのままお互い紅茶を飲みながら、しばし無言の時間が流れた。
「………」
「………」
この沈黙、怖いよ。
何か言わなきゃ…
「お前は隠し事が下手だな。」
「えっ…」
「そんな態度で誤魔化してるつもりか?」
掛けられた言葉に、ドキンと胸が鳴る音が聞こえる。
「あ…いや、えと…」
「エルヴィンだろ?」
続けてリヴァイの口から出た名前に、鼓動が一気に早まり、思わず目を逸らしてしまうエマ。
団長も兵長もなんでこんなに鋭いんだ…
「お前は分かりやす過ぎるからな。」
「へ、兵長、私の心の声まで聞こえてるんですか…」
エマは目線を逸らしたまま小さな声で呟く。
「あぁ、顔に書いてある。」
「えっ」
リヴァイの言葉にエマは焦って両手で顔を隠すが、そんな様子を見てリヴァイは小さく笑いを漏らした。
「今更顔を隠したって遅いだろ。それにエルヴィンのやりそうな事は何となく分かる。気に入らねぇがな。」
「はは…そうなんですね。」
エマは引きつった笑顔で相槌を打つと、リヴァイはため息混じりに続ける。
「あいつも仕事中に俺の部屋で何してんだかな。
それで、どこまでやった?」
…え
この人、今なんて?