第12章 ここにいていい理由
エルヴィンはしばらく口付けをしながらチラリとエマの顔を見やると、ゆっくり唇を離した。
「はぁっ、はぁ……」
唇が離れると同時にエルヴィンの両腕からも解放されたエマは、呼吸するのを思い出したかのように激しく酸素を吸い込んだ。
頭の中はもうぐちゃぐちゃだ。
「私の気持ち、伝わったかな?」
エマが俯き呼吸を整えていると、エルヴィンの声が頭上から降ってくる。
その言葉にまたドキッとしながら見上げると、そこには優しく微笑む顔があった。
ついさっきまで纏っていた艷っぽい雰囲気はもう感じられず、エマは先程までしていた行為を確認するかのように、自分の口元に触れる。
「まだ足りなかったか?」
「えっ!い、ちがいます!!」
急に真剣な顔で言うエルヴィンにエマは慌てて否定するが、そんな彼女の姿にエルヴィンは小さく笑い声を漏らし、
「君は本当に魅力的な女性だな。」
と耳元で囁いてみせた。
掠れた声が鼓膜をつついて、エマの顔は蒸気が出るほど真っ赤に染め上がり、思わず両手で顔を覆ってしまう。
「あ、あの…団長。」
エマは顔を覆い隠したまま、エルヴィンとは目を合わせずに口を開いた。
「ん?」
エルヴィンは普段通りの涼しい顔で彼女の顔をのぞき込む。
「大人の人…って、皆、こんなに大胆なことするんですか…?」
手の隙間からチラチラとエルヴィンに視線をやりながらエマがポツリと尋ねれば、エルヴィンは思わず吹き出してしまった。