第12章 ここにいていい理由
「君は本当に面白いことを言うね。」
エルヴィンは肩を震わせながら続ける。
「んー、どうだろうな。少なくとも君よりかは大胆な人が多いと思うが。」
「こ、恋人でない人と、その…こういうことしたりもするんですか…?」
「それは場合によっては十分アリだな。さっき私が君にキスをしたみたいにね。」
「そ、そうなんですか…」
エマはなんともいえない表情で返事をすると、エルヴィンは優しく笑いかける。
「君はそのままでいいんだよ。その純粋さは君の魅力のひとつだし、私が少しずつ君を大人にしていける楽しみでもあるんだから。」
「なっ…!!」
エルヴィンの言葉にエマは頭がくらりとした。
ダメだ。
これ以上団長と話をしていたら頭がパンクしてしまいそう…
「まぁ何はともあれ、少しは私の気持ちが伝わったみたいでよかったよ。返事は気長に待つから、エマの気の向いた時にしてくれればいい。」
「は、はぁ…」
「だが、ここまで気持ちを伝えたんだ。これからは君に一切の遠慮はするつもりはないから、その辺は覚悟しておいてくれ。」
「!!」
こっちが恥ずかしくなるようなことを次々と言ってのけるエルヴィン。
なんで毎度、こうもしれっとした顔でこんな台詞が言えるのか。
もしかして、これも大人の余裕ってやつなのか…?
エマはまたも頬が勝手に上気するのを感じ、いちいち敏感に反応する自分の身体を少し鬱陶しく思いながら、そんなことを考えていた。
「じゃあ、またリヴァイに見つかって怒られるかもしれないから、そろそろ行くとするよ。」
エルヴィンは肩を竦めて言うと、踵を返しかけたところで、何か思い出したようにもう一度エマに向き直った。
「今度、時間を作ってどこかへ出かけよう。あいつがやったその髪結のように、私にもエマの好きなものを一緒に選ばせてくれ。」
「え、なんでそこまで知って…」
「私はエスパーだからな。」
エルヴィンはそう言うとフッと笑って、ひとつに結われたエマの髪を指に絡ませるように触れると、部屋を去っていった。