第12章 ここにいていい理由
「それではダメだとも思ったよ。一兵団の団長が心の拠り所を作っているようじゃ、ただの甘えだと。
だがもうそんな事を考えるのもやめたんだ。少なくとも君がここに来てから私自身とても救われているから、それでいいじゃないか、とね。」
エルヴィンはそう言うと腕の力を弱めて体を離し、彼女の大きな瞳をもう一度見据えた。
「だからエマ。そうやって悩む君のこともどうにか助けてあげたいと思う。君がここで笑って過ごせるなら、私は何でもしてやりたいと思うんだ。
…私が必要としているから君にはここに居て欲しい。」
はっきりとそう言い切るエルヴィンに、大きな瞳は揺らいだ。
そして少しの沈黙のあと、エマはゆっくりとその口を開くのだった。
「……エルヴィン団長…ありがとうございます。そんな風に言ってもらえて…すごく…嬉しいです。」
「これが、君がここに留まっていいもうひとつの理由なんだが、理由としては弱いかな?」
エルヴィンは眉を下げながら小さく笑った。
「そんなことありません!私の方こそ本当に救われました。」
エルヴィンの言葉は、エマの不安を払拭するには十分すぎるほどだった。
この世界で誰かに必要とされるという事は、単純に、ここにいていいんだと言われていると思えるから。
今、エルヴィンが自分を必要としてくれているなら、エマにとってそれはとても喜ばしいことなのだ。
なのだが、エマにはひとつだけ気になることがあった。
これは、その…
俗に言う告白された…ということなのかな…
告白されたことがないからよく分からない。
自分の知っている乏しい恋愛知識の中では、告白は大抵、“好き”とか“付き合って”とかいう言葉を使うと思っていたんだが…
エルヴィンが言う、自分には私が必要だという話は、果たして恋愛感情的なそれなのか?
そう解釈するのはなんだか自信過剰な気もする…
もしかしたら単に心の支えになって欲しいだけなのかもしれない。
一兵団を背負う団長なら、精神的な支えが必要なのも頷ける。
…ん?でも私のことも支えたいと言ってくれていた。
ということはやっぱりそういうことなのか……?