第12章 ここにいていい理由
「エマ、顔を上げなさい。酷いことをされたんだ、自分から話しずらい気持ちは分かるし、そんなことは気にしていないよ。
私の方こそ謝らなければいけない。内地では行動を共にすると言っておきながら、結局それができなかった。申し訳なかったと思っている。」
エルヴィンは真摯な態度でエマへ謝罪の言葉を口にした。
「そんなことありません!団長がお忙しいのは分かっていますし、何よりあの時は私が兵長の言いつけを守らず勝手な行動をしたのがいけなかったので…」
「いや、そんなに身勝手だとは思わないさ。君も初めてまともに外へ出て楽しかったんだろう?自由に歩き回りたくなる気持ちもよく分かるよ。」
好奇心が強いのはいい事だからね、と言いながらエマへ優しく微笑みかけた。
自分で言うのも変だけど、リヴァイといいエルヴィンといい、優しすぎる。
この優しさについ甘えてしまいそうになる。
「すみません…少し気持ちが浮ついてました。」
エマは申し訳なさそうに言った。
「いけないことだとは言ってないだろう?その新しい髪結も良く似合ってるしな。」
「…あ、ありがとうございます。」
エマはエルヴィンが新しい髪結紐の存在に気付いていたことに少し驚きつつ、素直に礼を言った。
「ゴールドに、白の紐か。エマの黒髪によく映える色合いだな。とても素敵だ。」
エルヴィンはエマの結い上げられた髪を見つめながら、独り言のように呟いた。
エマは素直に褒められたことと、熱を持った視線にはにかんでしまい、少し下を向いてしまう。
するとエルヴィンはふっと笑みを零し、エマに向き直った。
「エマ。実はもう一つ君に用があるんだが。」
「……?なんでしょうか?」