第2章 始動
「ハンジ。お前もノックぐらいしたらどうだ?」
エルヴィンは呆れたように言う。
「ごめんごめん!こんな早朝に誰かいるとは思わなくてさ。
取り込み中悪かったね。そこの彼女は?」
「エマ・トミイだ。色々あって今日からこの兵舎内で働いてもらうことになった。」
エマの代わりにエルヴィンが紹介する。
「エマです、よろしくお願いします!」
「へぇー、珍しいこともあるもんだねぇ。
あぁ、私はハンジ・ゾエ。よろしくね!」
ハンジはエマに歩み寄ると、両手でエマの右手をガッチリと掴み、力強く握手をした。
「で、エマ。君はどうしてここに来ることになったの?」
「そ、それはですね…」
エマはここにいるハンジという人に、自分の口から本当のことを言ってしまっていいのかと口篭った。
そんな彼女の耳に、エルヴィンの良く通る低い声が届いてその内容に驚いた。
「彼女は昨夜、異世界からここへトリップしてきたんだ。」
「え?!トリップ…ちょっとまってそれ本気?!異世界から来たって、まさかそんなこと…」
「信じられないかもしれないが、本当だ。」
エルヴィンは普通に話をするノリでさらっとエマの真実を包み隠さず話したのだ。
ハンジはというと、驚きでエルヴィンとエマの顔を忙しく行き来させている。
その様子を見て、リヴァイがエルヴィンに申し立てた。
「おいエルヴィン。このクソメガネにバレると色んな意味でこいつが可哀想じゃねぇか。」
「可哀想かどうか決まるのは、彼女がハンジのことをどう捉えるかによるだろう?
それに、同性の兵士一人くらいには事情を知ってもらっておいた方が良いだろう。ハンジなら色々世話も焼いてくれるはずだ。」
真実を知るのは自分たちだけで十分だと思っての申し立てだったが、涼しい顔をして最もらしいことを言われてしまい、リヴァイは大きく舌打ちをして、
「余計な世話じゃなきゃいいがな。」
と、目の前でウロたえるハンジを横目に、今度は面倒くさそうにため息をついていた。