第11章 ウォール・シーナにて ※
備え付けの椅子に座り、リヴァイの様子をぼーっと見つめるエマ。
リヴァイはコップに水を注ぎエマへ差し出した。
「すみません…ありがとうございます。」
一気に水を飲み干すと、カラカラに乾き切っていた喉がじんわりと潤っていった。
「エルヴィンにはさっき話した。あの憲兵は恐らくすぐに開拓地行きだ。」
「そうですか…」
これで男の始末が決まると思うと、エマはいくらか安堵の表情を浮かべる。
「もうだいぶ遅い。無理に寝ろとは言わんが、少しでも横になっておけ。」
リヴァイは顎でベッドを指した。
当たり前だが、この部屋にはシングルベッドがひとつあるだけだ。
それにリヴァイの自室のように、人が寝られるソファも置いていない。
ということは…
リヴァイの部屋に行く時点で予想はついていたはずだが、エマはこの後の状況を改めて想像し、急に緊張しだしてしまった。
「あの、その、私がそこで寝たら兵長寝る場所なくなっちゃいますよね…?」
分かり切った質問だがつい投げかけてしまう。
「何言ってる。俺もそこで寝る。今夜はお前の傍にいると言っただろ。」
するとリヴァイはなんの恥ずかしげもなく言い切り、ベッドの縁へ腰掛けた。
その言葉にエマはまた顔を赤らめてしまった。
確かにあのまま一人でいたら、フラッシュバックで気がおかしくなりそうだった。
だからリヴァイの厚意に甘えさせてもらうことにしたのだが、狭いベッドに二人で寝ることを考えると別の意味で眠れなくなりそうだ。
「すみません………では、失礼します…」
エマは赤らめた頬を気にしながら遠慮がちにベッドへと上がった。
「そんなに淵にいたら落ちるぞ。」
ベッドの端に体を寄せて横向きに寝転んだ背中に、リヴァイの低音が響く。
そんなこと分かっている。
分かっているが、ベッド上のリヴァイの存在をなんとか誤魔化したくて、つい距離を取ってしまう。
「もっとこっちへ来い。」
また背中に優しい低音が響く。
「はい……」
エマは忙しく鳴り続ける心臓を落ち着かせることができないまま、ついにリヴァイの方へ体を向けた。