第11章 ウォール・シーナにて ※
二人は宿に着きチェックインを済ませると部屋へ向かった。
リヴァイは部屋の前に着くと、エマの顔色を気にしながら話し出す。
「エマ、エルヴィンにはこの話をさせてもらうがいいか?」
「はい…それは大丈夫です。」
「あの野郎には自分が犯した罪対して相応の報いを与える必要がある。エルヴィンが帰ったら話をして、明日憲兵に報告してもらうつもりだ。」
リヴァイは憲兵の男から取り上げた身分証を確認しながらエマへ説明した。
「分かりました。よろしくお願いします。」
エマはペコッと頭を下げると、リヴァイはその頭をわしゃわしゃと撫で、
「今日はゆっくり休め。」
と優しく言葉をかけた。
一一一一一一一一一一一一一一一一一一
ーバサッ!!!
「はぁっ、はぁっ…はぁっ……」
ダメだ…
さっきから眠ろうと何度も横になるが、目を閉じると先程の記憶が鮮明にフラッシュバックしてしまう。
ニヤリと口端を吊り上げた顔、
自分を舐め回すように見ていた目に、気色の悪い声、
そして、身体を這い回った忌々しい指と舌の感覚……
「うぅっ…!!」
エマは込み上げてくる嘔吐感を必死に抑え、ベッドから起き上がった。
手はカタカタと震え、喉はカラカラに乾燥してしまっている。
精神的ショックは自分が思っていた以上に大きかった。
「水……」
エマはふらつく足を動かし、水飲み場へ向かおうとドアを開けた。
「眠れねぇのか?」
「へいちょ……」
廊下へ出ると、ちょうどリヴァイに出くわした。
部屋着に身を包んだリヴァイは心配そうにエマに近づくと、彼女の顔を見て目を丸くする。
「何て面だそりゃ……」
「あはは…そんなひどい顔してますかね。」
エマは力なく笑うと、就寝の挨拶をして水飲み場へと向かおうとした。
が、すぐにその腕を掴まれてしまった。
「こうなるかもしれねぇってことは予測してたんだが……もっと早くに言うべきだったな。
辛いのを一人で我慢するな。傍にいてやるから、今夜は俺の部屋へ来い。」
リヴァイは憔悴しきったエマの目を優しく見つめた。