第11章 ウォール・シーナにて ※
「……!」
リヴァイの方を向くと、わずか十数センチ先にはその整った顔があった。
近すぎる………
リヴァイはじっとエマを見つめたまま、彼女の髪をひと撫でした。
エマはビクッと小さく体を震わし、さらに鼓動を速めた。
「すまん…何もしないから安心しろ。」
リヴァイはエマが怖がってしまったではと直ぐに手を引っ込めた。
しかしエマは全然それどころではなかった。
安心しろと言われても、こんなに心臓がうるさくては眠れないじゃないか…
「あ、あの兵長。その……」
エマはこの胸の高鳴りをどう落ち着かせていいか分からず、困惑したような目でリヴァイを見やった。
「兵長の顔が…その、近すぎて…緊張してしまいます……」
エマはポツポツと本音を漏らすとついに俯いてしまった。
「なら、こうした方がいいか?」
「!!」
リヴァイはそう言いながら、エマの頭を抱え込むようにしてそっと自身の胸に埋めた。
エマはリヴァイの胸の中で目を丸くして固まってしまう。
「これなら顔は見えないだろ?それにこの間、お前はこうされるとほっとすると言っていたしな。」
そうだ…確かあれは団長に抱きしめられたのを兵長に悟られて、何故か兵長にも抱きしめられた時。
リヴァイの体温が、匂いが、抱きしめる腕がとても心地よかったのをエマは思い出した。
「まぁ、そうでなくても気が弱ってる時はこうして誰かの肌に触れてるだけでも安心するもんだ。」
リヴァイの落ち着いた声を聞き、エマは目を瞑った。
あぁ、なんだろう。
やっぱりすごく安心する……
リヴァイの力強い心音が耳に伝わる。
相変わらず自分の鼓動は速かったが、今は不思議とそれも心地よく感じる気がする。
リヴァイの暖かな温もりの中で、気がつくとエマは意識を手放していた。