第11章 ウォール・シーナにて ※
「おい、いつまでそうしてるつもりだ?」
「だ、だって………」
リヴァイとエマは先程の宿を後にし、本来泊まるはずの宿へと歩いていたのだが。
さっきからエマはリヴァイの隣で俯き、目を合わそうとしない。
「俺は気にしてないと言ってるだろうが。」
「分かってます!分かってるけど…」
思い出すと顔から火がでそうなほど恥ずかしくなる。
あの後エマは我に返ると、リヴァイの前で堂々と自分の醜態をさらけ出していた事に気が付いて、それからはもう恥ずかしくて恥ずかしくて、まともにリヴァイの顔を見られなくなってしまったのである。
「大丈夫だ。上は肌蹴たシャツからちらっと見えたぐらいだし、下はシーツに隠れてたから見えていない。」
「そ!そういう問題じゃなくてですね……」
改めてその時の状況を説明され、思わず声が上ずってしまうエマ。
それに今冷静になって思い出すと、さっきはいくら特殊な状況だったとはいえ、リヴァイに抱き着いたりキスをされたりしたことも恥ずかしくてたまらない。
リヴァイはキスについては何も言ってこないが、あれは一体どういうつもりだったのだろう…
気になっていたが、自分から確認する勇気はなかった。
「おい、いい加減顔を上げろ。」
エマが俯いたまま考えていると、リヴァイはその頬を掴んで自分の方へ向かせた。
「へ、へいひょ……」
「……なんて面してやがる。」
頬を掴まれたまま今にも泣きだしそうなエマの顔を見て、リヴァイは思わず吹き出してしまった。
「逆にあの場には俺しか居なかったんだから良かったじゃねぇか。」
「………そ、そうですかね。」
「あぁ。俺の前だけで本当に良かったと思う。」
何度もそう繰り返すリヴァイの言葉にはあまり納得出来なかったが、エマはこの気持ちを落ち着かせる為にもとりあえずそう思うことにしたのであった。