第11章 ウォール・シーナにて ※
しばらくして、リヴァイの胸に埋めていた顔を上げたエマ。
「少しは落ち着いたか?」
「…はい。兵長、本当にごめんなさい。」
エマはリヴァイに向き直り、申し訳なさそうに謝罪した。
「いや、お前を危険な目に合わせたのは俺の責任だ。お前を一人にしなければこんなことにならずに済んだ。」
「そんなことないです!私がちゃんと言いつけを守っていれば」
「いや俺が離れたのが間違いだ。お前は悪くない。」
リヴァイはエマの反論を遮るように言うと、エマの体を引き寄せもう一度抱きしめる。
「守ってやれなくてすまなかった…」
それはいつも強気で口の悪いリヴァイからは聞いたことのない、弱々しく掠れた声だった。
突然見ず知らずの男に強姦まがいなことをされて、どれほど怖かっただろう。
こんな狭い部屋に閉じ込められて、誰の助けも乞うことが出来ずに。
その時のエマの気持ちを思うと、リヴァイは目の前の小さな身体を抱きしめずにはいられなかった。
「リヴァイ兵長。」
しばらくそのままでいると、腕の中から穏やかな声が聞こえる。
リヴァイは抱きしめる手を緩めてエマを見やると、彼女は泣き腫らした目を細め、
「助けてくれて、ありがとうございました。」
と微笑んだ。
リヴァイはその顔をじっと見つめたまま、何も返さなかった。
不覚にも、彼女のその儚くそして美しい表情に思わず目を奪われてしまっていたのだ。