第11章 ウォール・シーナにて ※
「…………」
リヴァイはエマの必死の訴えを聞き終わると、再び男に鋭い視線を向けた。
「ひっ!!」
男はガタガタと体を震わせながら、怯えた目でリヴァイを見上げている。
左頬は大きく凹み、歯も抜けてしまっていた。
リヴァイは片手で男の胸ぐらを掴んで持ち上げ、
「おい、てめぇ。
もしまた何かしたら次は命はないと思え。」
と言い放つと、そのまま男を床へ投げつけた。
そして倒れ込んだ男の前にしゃがみ、ジャケットの胸ポケットから男の身分証を奪い取った。
リヴァイが背を向けた隙に、青ざめた顔をした男は慌てて立ち上がり、逃げるように部屋から去っていった。
「エマ…」
リヴァイはすぐにエマに駆け寄り、自分が着ていたジャケットを彼女の肩に掛けた。
「へい、ちょう……私………」
リヴァイの顔を見ると涙が一気に溢れ出す。
「何も言うな。」
リヴァイは弱々しく震える彼女を力強くも優しく抱きしめ、エマから零れ落ちる涙をその胸に黙って受け止め続けた。