第11章 ウォール・シーナにて ※
「おい…これは何の真似だ。」
見上げたそこには、鋭く尖ったナイフのような視線を男に突き刺す、人類最強の姿。
思い切り蹴り飛ばされた男は、床に蹲ったままリヴァイを睨みつけた。
「お前…なんでここがグァッ!!」
「これは何の真似だと聞いている。何度も言わせるな。」
リヴァイは反論しようとした男の顔を土足で踏みつけると、ギリギリとその足に体重をかけながら、ドスの効いた声で見下ろしている。
「あっあぁぁ!!いひゃいいひゃい!!やめひぇくれ!!!」
「てめぇもエマに同じことしてたんだろ?
泣いても叫んでもそのクソ汚ぇ手を止めなかったんだろうが。」
リヴァイは抑揚のない声で喋りながら、踏みつける足にさらに力を込めた。
その三白眼は今にも男を殺してしまいそうな程、激しい憤りに満ちていた。
「あぁぁぁ!!ごえんなはい!ごえんなはいぃ…」
「あ゛?
なんて言ってるか全然聞こえねぇな。」
「へっ兵長!やめてください!!」
リヴァイは男とは違う声に動きを止め顔を上げると、ベッドの上で涙を流しながら訴える彼女の姿が目に映った。
「お前は黙ってろ。こいつは俺が殺す。」
「お願いだから…もうやめてください……」
「こいつがお前に何をしたのか、お前が一番よく分かってるだろ。」
「分かってます………でも、こうなったのは全部私のせいなんです!だからこんなことでこれ以上…兵長の手を汚させたくありません…」
リヴァイの目は本気だと思った。
自分が声を上げなければきっとこの男はこのままなぶり殺される。
いくら酷いことをされていても、リヴァイが人殺しになってしまうようなことは絶対にあってはならない。
エマは自分のせいでこれ以上リヴァイに迷惑をかけたくない一心で、必死に訴えかけた。