第11章 ウォール・シーナにて ※
その男はユニコーン紋章のジャケットを着ていた。
憲兵だ。
その憲兵はエマの声にチラリと後ろを振り返る。
「あの、すみません!大通りに出たいんですがどう行ったらいいでしょうか?!道に迷ってしまって…」
エマはその男に駆け寄ると迷わず道を尋ねた。
「君は調査兵か…この道はここで暮らす者でもなかなか分かりずらいから、迷うのも無理ないな。
分かった案内しよう。着いてきてくれ。」
憲兵の男は突然の申し出にも関わらず快く案内を引き受けてくれた。
「ありがとうございます!!」
男は不安そうなエマに優しく微笑みかけると、くるりと背中を向けて歩き始めた。
エマはやっとリヴァイの元へ戻れるとほっとしながらもきちんと礼をいい、早速後ろを着いて行った。
しばらく歩くと、憲兵の言った通り大通りへ出た。
しかし、
「……あの、ごめんなさい。ここは…」
明らかに先程リヴァイと歩いていた通りとは違っている。
「ここじゃなかったか?」
「はい…もっと…たくさん商店があった気がします…」
エマは遠慮がちに答え、男が何か言う前に続けて言葉を発した。
「あ、あの!あとは自分で何とかしてみますね!お仕事中にすみませんでした!」
見ず知らずの人にこれ以上迷惑かけられないと思っての発言だったのだが、それに対して男は意外な言葉を口にした。
「いや、大丈夫だ。君は団長達と予算審議会に出ていただろ?君達の今夜泊まる宿は実はこの通り沿いにあるんだ。
もうだいぶ暗いし団長か兵士長が戻ってるかもしれない。すぐ近くだし、一度寄ってみるか?」
思いもよらない提案に、エマは目を丸くする。
「それならすみません、一応、行ってみてもいいですか?」
今朝、シーナへ来て最初に宿に荷物を預けていたから、リヴァイも場所を知っているはずだ。
大通りを探して自分がいないと分かったら、宿の方も見に行っている可能性もなくはない。
「あぁ、分かった。もしそこに居なければ、急いで商店のある通りへ行こう。」
憲兵は嫌な顔一つせず、むしろ一生懸命協力してくれて、エマは巻き込んで申し訳ないと思いつつも、今はこの憲兵に頼るのが最善だと思い、再び後をついて行った。