第11章 ウォール・シーナにて ※
「ここは…?」
気がつくと、エマは見覚えのない路地にきていた。
どうやら考え事をしているうちに迷い込んでしまったらしい。
だいぶ日も落ちいて、辺りは暗くなりかけている。
エマは来た道を引き返そうとしたが、ふと見た視線の先に気になるものを見つけしまった。
足を止めて、じっと目を凝らす。
「え、あれって……」
エマはその存在を確かめるようにその方向へとゆっくり歩みを進めた。
近づくにつれて、胸の鼓動がどんどん早まっていくのを感じる。
そしてそれがはっきり目に映ると同時に、エマの心臓は一際大きくドクンと音を立てた。
エマの前に姿を現したのは、蔦がびっしりと絡みついた古い井戸。
目の前の光景が、あの日、元いた世界で見たそれとぴったり重なる。
これは幻かとも思い右手で軽く目を擦ってみるが、それは確かに存在していた。
間違いない、私は…
この井戸に落ちて、
この世界に迷い込んだんだ