第11章 ウォール・シーナにて ※
リヴァイは髪結紐を眺めるエマを少し見つめると、
「貸せ」
と言ってエマの手からひょいと持ち上げ、さっさと歩いていってしまった。
「兵長?!」
エマは突然手の中から奪われてしまいリヴァイを追いかけようとするが、後ろを振り返ったリヴァイに“そこで待ってろ”と言われていまい、大人しくその場で待つことにした。
しばらくして店の奥から戻ってきたリヴァイは、手に小さな紙袋を持っていた。
「兵長、まさか」
「いつも助かってるからな。その礼だ。」
リヴァイはエマの言葉に被せるように言うと、紙袋を手渡した。
それを受け取ったエマの目はみるみる輝きを増していく。
「あ…ありがとうございます!とっても嬉しいです!!」
「あぁ。」
リヴァイは普段と変わらず愛想のない表情で返事をするが、エマはそれはそれは嬉しそうに満面の笑みを向け、ペコっと頭を下げた。
気に入った物を貰えたことはもちろんなのだが、それ以上に、些細なことだけれどリヴァイが自分を思ってしてくれた、という事実がとにかく嬉しかったのだ。
「兵長は、たまにこうやって優しくしてくれるからギャップ萌えしちゃいます。」
「ギャップ萌え?それは褒め言葉か?」
エマが照れくさそうにリヴァイに言うと、リヴァイは聞きなれない単語に怪訝そうに尋ねる。
「そ、そうです!」
エマはさらに照れながら返事をした。
「そうか。だが、たまに優しいというのは間違いだな。俺は元々優しい。」
「フフッ、それ自分で言いますか?」
エマは思わず吹き出した。
「お前に俺についての正しい知識を教えてやっただけだ。」
リヴァイはエマの頭を乱暴に撫でた。
「ちょ、髪の毛ぐちゃぐちゃになっちゃいま………
兵長?」
髪を撫でていたリヴァイの手がピタリと止まる。
エマは彼の顔を覗き込んだが、リヴァイは街道の方を見つめたまま返事をしない。
「どうしたんですか?」
「……エマ、悪い。少し話をしたい奴がいる。」