第11章 ウォール・シーナにて ※
「エマ、どこか行きたい場所はあるか?」
エルヴィンが去ると、リヴァイはエマに問いかけた。
「え?」
エマはこのまま宿へ直帰するものだとばかり思っていたため、思わぬ質問に聞き返してしまった。
「まだ宿に帰るには早ぇしな。せっかくここまで出て来てんだ、お前も仕事だけしてとっとと寝るだけじゃつまらねぇだろ。」
「いいんですか…?」
「あぁ、遠慮しなくていい。」
気を遣ってくれたのだろうか…?
何気ないリヴァイの提案が、すごく嬉しい。
エマはパァッと顔を明るくさせて答えた。
「じゃあ、街へ出てみたいです!」
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石造りの建造物が建ち並ぶウォール・シーナの街並みは、とても美しかった。
もう日の入間近だが、まだ街には大勢の人が行き交い賑やかな雰囲気だ。
エマとリヴァイは石畳の街道を肩を並べて歩いていた。
「随分と興味津々だな。」
「はい。こういう景色を歴史書で見たことがあって。なんかそこにタイムスリップしてきたみたいに思えちゃってとても楽しいです!」
「何言ってる。お前は実際トリップしてきてるだろうが。」
「あ、そうでした…!」
リヴァイの的確すぎるツッコミに思わず笑い声が漏れる。
ここへ来てから初めて自由に外へ出られて嬉しかったのもあるが、こうしてリヴァイと街を歩けることも何だか嬉しくて、エマの心は弾んでいた。
「あ!兵長!ここのお店に入ってみたいです!」
街道にずらりと並ぶ路面店の中から、エマはこじんまりとした商店を指さした。
そこは小さな雑貨屋で、木や皮、石など天然素材で一つ一つ丁寧に作られた物が所狭しと並べられている。
エマは店の中をしばらく物色すると、その中からひとつを手に取った。
「綺麗…」
手に取ったのは、ゴールドとホワイトの糸で紡がれた髪結紐。
「気に入ったのか?」
「わっ!びっくりしたぁ…」
エマがそれを見つめていると、急に背後から声が聞こえてビクッと肩を震わせた。
「綺麗な色だなぁって。」
髪結紐をかざすとゴールドの部分がキラキラと光を反射し、とても繊細な美しさを感じる。