第11章 ウォール・シーナにて ※
「それでは、これにて予算審議会を終了する。」
ザックレー総統の号令と共に、続々と席を立つ三兵団の幹部や関係者達。
数時間に及んだ審議会は無事閉会した。
「前より多く貰えるみてぇだな。良かったじゃねぇか。」
「そうだな、早速今年度の予算編成を具体的に練り直すとしよう。
エマ、予定より長引いてしまったが疲れてはいないか?」
「はい!大丈夫です。」
エマは正直慣れない雰囲気に緊張して少し疲れていたが、せっかく自分を連れてきてくれた人に対して堂々とそんなことは言えないと思い、笑顔を向けた。
「そうか。」
エルヴィンもエマに微笑むと、ふぅっと大きく息を吐いた。
先程までエルヴィンが纏っていた張り詰めた空気も少和らぎ、少し肩の力が抜けたような感じだ。
審議会中のエルヴィンはとてもキリリとしていて、その姿は普段エマに微笑みかけてくれるそれとはまったく違う様子であった。
そんな彼はやはり一兵団の指揮官であるのだと強く思わせられるエマなのであった。
「リヴァイ、結局お前にばかり任せてすまないが、この後もエマのことを頼んでもいいか?」
「こいつは元々俺の秘書だぞ。わざわざお前から頼まれなくても大丈夫だ。」
「そうだったな。戻りは遅くなりそうだから、エマと先に宿へ行っていてくれ。」
「あぁ、分かった。」
エルヴィンはまた誰かに呼び出されたのだろうか?
ここに着いてからずっと誰かに声をかけられている気がする。
本当に多忙だ。
エマはエルヴィンとリヴァイのやり取りを眺めながらそんなことを考えていると、ふいに大きな手が頭の上にのしかかる。
「エマ、今日はお疲れ様だったな。慣れないことをして疲れているだろうから、後はゆっくりしなさい。」
「はい、ありがとうございます。」
エルヴィンは目線を合わせて優しく彼女に話しかけると微笑んで、その場を立ち去った。