第11章 ウォール・シーナにて ※
「団長、本当にお忙しいですね。」
「たぶん会議まで戻らねぇだろうな。とりあえず飯でも食うか。」
こういうことはザラなのか、リヴァイは慣れた様子でそう言うと、歩みを進め始めた。
午後からすぐに会議のため、昼食は憲兵団基地の食堂で取ることになった。
ちょうど昼時と重なったこともあって、食堂は大勢の憲兵達で溢れている。
「…なんだか浮いてますね。」
「当たり前だ。ここは憲兵団の食堂だからな。」
エマとリヴァイは食堂の隅で食事を取っていたが、自由の翼を施したジャケットはここではかなり目立っている。
しかも人類最強のリヴァイがいるということで、自然と憲兵達の視線が集まっていた。
エマは場違いな雰囲気と憲兵達から注がれる視線に、若干の居づらさを感じていた。
「兵長はこんな所でも堂々としてて凄いです。」
「いつものことだから慣れてる。お前もあまり気にするな。」
「はい…」
エマは返事をしながらシチューに口を付けた。
中には鶏肉がゴロゴロと入っている。
調査兵団の食堂ではシチューに肉はおろか、普通の食事でも肉を食べたことがなかったため、エマは久しぶり食べられたことに思わず顔が綻んだ。
「美味いか?」
そんなエマを見てリヴァイが口を開く。
「あ、はい。お肉食べるの久しぶりだったのでちょっと嬉しくなっちゃって。」
エマは顔を見られていたことに少し照れながら答えた。
「憲兵の食事はこれが普通らしいな。」
「そうなんですか?!食糧難で肉はなかなか食べられないって聞いてたから、普通に出てきてびっくりしましたけど…」
「あるところにはある、ってことだ。」
リヴァイは疎ましそうに言い放つ。
「…なんかそれ、納得いきませんね。」
建物といい食事といい、憲兵団と調査兵団ではこうも待遇が違うものかと思い、エマはつい嫌悪感を露わにしてしまった。
「そうだな。俺もおかしいと思うが、ずっとこうだ。
まぁ世間からしたら調査兵団に対して税金を払うことすら無駄だと思っている奴らもクソほどいるから、まともに飯が食えるだけいいのかもな。
莫大な費用と大勢の犠牲を払っても、未だに大した成果も出せずにいるってのが、調査兵団に対する大概の民衆の評価だからな。」